たわらクリニック
たわらクリニック東京の待合室

病名を知ることは、治療を考えるための一つの手がかりです。

疾患別解説

同じ症状でも原因となる病気は一つとは限りませんまた、同じ病名でも症状の出方は人によって異なりますこのページは自己診断のためではなく、代表的な疾患について知り、必要な受診や治療を考えるための入口としてご利用ください

うつ病

うつ病は、気分の落ち込みや「何をしても楽しくない」「以前好きだったことにも興味がわかない」といった状態が続き、仕事や学校、家庭生活などに支障をきたす病気です。精神的な症状だけでなく、眠れない、朝早く目が覚める、食欲が落ちる、疲れやすい、身体が重い、頭が働かない、集中できないといった身体的な症状から始まることもあります。

「自分は役に立たない」「周囲に迷惑をかけている」などと自分を強く責めてしまうこともあり、症状が強くなると仕事に行くことや日常的な家事を行うことさえ難しくなる場合があります。単なる気分の問題として我慢せず、こうした状態が続いている場合には早めに相談することが大切です。

治療では、まず十分な休養を確保し、仕事量を減らす、休職するなどの環境調整を行います。そのうえで症状に応じて薬物療法やカウンセリングなどを組み合わせます。

薬物療法では、SSRIと呼ばれるエスシタロプラム(レクサプロ)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、パロキセチン(パキシル)、SNRIのデュロキセチン(サインバルタ)、ベンラファキシン(イフェクサーSR)、NaSSAのミルタザピン(リフレックス/レメロン)、そのほかボルチオキセチン(トリンテリックス)などが使用されます。

薬だけで十分な改善が得られない場合や、副作用などで抗うつ薬を使用しにくい場合には、状態や適応を確認したうえでTMS(経頭蓋磁気刺激)治療を検討することもあります。

適応障害

適応障害は、職場の異動や転職、仕事量の増加、上司・同僚との人間関係、家庭環境の変化など、本人にとって大きな負担となるストレスをきっかけに、心や身体にさまざまな症状が現れる状態です。

気分の落ち込み、不安、涙が出る、イライラする、眠れない、食欲がない、動悸や吐き気がするなどの症状がみられ、「会社のことを考えるだけで具合が悪くなる」「朝になると起きられない」「職場に近づくと動悸がする」といった形で現れることもあります。

適応障害では、ストレスの原因となっている環境を調整することが治療の重要なポイントです。仕事量や勤務時間を調整する、配置転換を検討する、一定期間仕事から離れて休養するなど、症状や状況によって対応を考えます。

適応障害そのものに特化した治療薬があるわけではありませんが、症状が強い場合には薬を使用することがあります。たとえば不眠に対してレンボレキサント(デエビゴ)、スボレキサント(ベルソムラ)、ダリドレキサント(クービビック)などの睡眠薬を使用することがあります。不安や抑うつ症状が強く長期間続く場合には、うつ病や不安症など別の疾患が併存していないかを確認したうえで、必要に応じて抗うつ薬などを検討します。

「自分が弱いから」と無理を続けることで症状が悪化することもあります。仕事や生活に支障が出始めている段階で、早めに受診することが大切です。

社交不安障害(あがり症)

社交不安障害は、人前で話す、会議で発言する、プレゼンテーションをする、朝礼で話す、面接を受ける、初対面の人と会話する、会食するなど、「人から注目される場面」で強い不安や恐怖を感じる病気です。

「失敗したらどうしよう」「声が震えていると思われるのではないか」「顔が赤くなったら恥ずかしい」などと強く考え、実際にその場面になると、動悸、手や声の震え、発汗、赤面、息苦しさ、吐き気、頭が真っ白になるなどの症状が現れることがあります。

こうした経験を繰り返すと、人前で話す機会を避けるようになり、仕事、就職活動、昇進、学校生活、人間関係などに影響することもあります。

治療では、認知行動療法などの心理療法と薬物療法を症状に応じて組み合わせます。日常生活のさまざまな対人場面で不安が続く場合には、SSRIのエスシタロプラム(レクサプロ)、パロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(ルボックス/デプロメール)などが使用されます。効果が現れるまでにはある程度の期間が必要なため、継続して治療することが重要です。

一方、「プレゼンのときだけ」「朝礼のときだけ」など特定の場面で動悸や震えが強く出るタイプでは、プロプラノロール(インデラル)やメトプロロール(セロケン)などのβ遮断薬が症状軽減のために用いられることがあります。これらは日本では社交不安障害そのものに対する承認薬ではなく、適応外で使用される薬です。また、喘息や脈が遅い方などには使用できない場合があります。

たわらクリニックのオンライン自費診療では、会議、プレゼン、朝礼、面接など特定場面での「あがり」に悩んでいる方についてもご相談いただけます。

パニック障害

パニック障害は、突然、激しい動悸や息苦しさ、胸の苦しさ、めまい、発汗、手足の震えなどが起こり、「このまま死んでしまうのではないか」「意識を失うのではないか」と感じるほど強い恐怖に襲われるパニック発作を繰り返す病気です。

発作は突然起こることが多く、いったん経験すると「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が強くなることがあります。その結果、電車やバスに乗れない、高速道路を運転できない、映画館や美容院に行けない、一人で外出できないなど、発作が起きたときに逃げにくい場所を避けるようになることもあります。

動悸や胸部不快感、息苦しさなどは心臓や呼吸器、甲状腺など身体の病気でも起こるため、症状によっては身体疾患がないかを確認することも重要です。

治療では、薬物療法と認知行動療法が中心となります。薬物療法ではSSRIのパロキセチン(パキシル)やセルトラリン(ジェイゾロフト)などが代表的です。SSRIは服用してすぐに効果が現れる薬ではなく、少しずつ発作や予期不安を軽減していきます。

強い不安や発作に対してベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使用することもありますが、長期間の使用では依存や耐性などの問題が生じることがあるため、使用期間や量を慎重に判断します。

パニック障害は適切な治療によって改善が期待できる病気です。「また発作が起こるかもしれない」と行動範囲が狭くなってきた場合には、早めの受診をおすすめします。

強迫性障害

強迫性障害(強迫症)は、「鍵を閉め忘れたのではないか」「手に細菌やウイルスが付いているのではないか」「誰かを傷つけてしまったのではないか」など、自分では望んでいない考えやイメージが繰り返し浮かぶ強迫観念と、その不安を打ち消すために特定の行為を繰り返す強迫行為を特徴とする病気です。

たとえば、何度も手を洗う、戸締まりを繰り返し確認する、物の位置や順番に強くこだわる、特定の数字を避ける、家族に「本当に大丈夫?」と何度も確認するといった行動がみられます。

本人も「ここまでやる必要はない」「考えすぎだ」と分かっていることが多いものの、不安が強く、行為をやめることができません。確認や手洗いに何時間も費やし、仕事や学校に遅れるなど、生活に大きな支障が出る場合もあります。

治療では、薬物療法と認知行動療法、特に不安を感じても強迫行為を行わずに慣れていく曝露反応妨害法(ERP)が重要です。

薬物療法ではSSRIのフルボキサミン(ルボックス/デプロメール)やパロキセチン(パキシル)などが代表的です。強迫症状の改善にはうつ病よりも時間がかかることもあり、十分な期間をかけて治療効果を評価します。

症状を家族に隠して何年も受診できない方も少なくありません。「確認や手洗いに時間を取られて生活がつらい」と感じている場合にはご相談ください。

不眠症

不眠症は、単に「睡眠時間が短い」ということではありません。寝床に入ってもなかなか眠れない(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、予定より早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、眠っても熟睡した感じがしない(熟眠障害)などの睡眠問題が続き、日中の生活に支障が出ている状態をいいます。

日中には、眠気、疲労感、集中力や注意力の低下、イライラ、気分の落ち込みなどが起こり、仕事の能率や生活の質が低下することがあります。

不眠は、生活リズムの乱れやストレスだけでなく、うつ病や不安症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などの病気、アルコール、カフェイン、服用している薬などが関係している場合があります。そのため、「眠れないから睡眠薬を飲む」だけでなく、まず原因を整理することが大切です。

治療では睡眠時間や生活習慣を見直すとともに、必要に応じて睡眠薬を使用します。現在は、脳の覚醒を抑えるオレキシン受容体拮抗薬のレンボレキサント(デエビゴ)、スボレキサント(ベルソムラ)、ダリドレキサント(クービビック)や、メラトニン受容体に作用するラメルテオン(ロゼレム)などがあります。

そのほか、ゾルピデム(マイスリー)、エスゾピクロン(ルネスタ)などが使用されることもあります。睡眠薬にはそれぞれ特徴があり、年齢、睡眠のタイプ、翌日の眠気、併用薬などを考慮して選択します。

むずむず脚症候群

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群/下肢静止不能症候群)は、座っているときや横になっているときなど安静時に、脚の奥に「むずむずする」「虫が這うような感じがする」「じっとしていられない」などの不快感が現れ、脚を動かしたくなる病気です。

夕方から夜にかけて症状が強くなり、歩いたり脚を動かしたりすると一時的に楽になることが特徴です。寝床に入ると症状が強くなるため、「眠りたいのに脚が気になって眠れない」という状態になり、不眠や日中の眠気につながることもあります。

症状には鉄不足が関係することがあり、必要に応じて血液検査で血清鉄やフェリチンなどを確認します。腎機能障害、妊娠、糖尿病などの身体疾患や、服用している薬が症状に影響していることもあります。

鉄欠乏が認められる場合には鉄剤による治療を検討します。また、中等度以上の症状では、プラミペキソール(ビ・シフロール)やガバペンチン エナカルビル(レグナイト)などが使用されることがあります。

特にドパミン系の薬では、長期間使用するうちに症状が以前より早い時間帯から出現したり、症状が強くなったりする「オーグメンテーション」が起こることもあるため、経過を確認しながら治療することが重要です。

「不眠症だと思っていたが、実は脚の不快感で眠れない」という方も少なくありません。寝床に入ると脚を動かしたくなる症状がある方は、一度ご相談ください。

大人のADHD

ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性などの特性によって日常生活や社会生活に支障が生じる発達障害の一つです。

成人では、「仕事の締切を忘れる」「大切な物をすぐ失くす」「書類や予定の管理が苦手」「話を聞いていても途中から別のことを考えてしまう」「複数の仕事を始めるが最後まで終わらない」「後先を考えず行動してしまう」などの形で現れることがあります。

子どもの頃には目立たなかった方でも、社会人になって仕事や生活の自己管理が求められるようになり、初めて困難が明確になることがあります。一方で、睡眠不足、うつ病、不安症、強いストレスなどによっても集中力や記憶力が低下するため、「最近集中できない」という症状だけでADHDと診断することはできません。子どもの頃からの傾向、学校生活、仕事歴、現在の生活状況などを総合的に確認します。

治療では、スケジュール管理や環境調整、生活上の工夫などとともに、必要に応じて薬物療法を行います。

成人ADHDに使用される代表的な薬には、メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)があります。それぞれ作用の仕組みや効果の現れ方、副作用が異なるため、生活状況や身体状態を考慮して選択します。

特にコンサータは適正流通管理が必要な薬剤であり、処方には一定の条件があります。薬物療法だけですべてを解決するのではなく、自分の特性を理解して生活や仕事の仕組みを整えることも大切です。

双極性障害

双極性障害は、気分が落ち込むうつ状態だけでなく、気分や活動性が異常に高まる躁状態または軽躁状態を繰り返す病気です。

躁状態・軽躁状態では、「睡眠時間が数時間でも元気に活動できる」「いつも以上に話し続ける」「アイデアが次々に浮かぶ」「自信が非常に強くなる」「仕事や予定を大量に入れる」「高額な買い物をする」「投資やギャンブルなど大胆な行動を取る」といった変化がみられることがあります。

本人は躁状態を「調子が良い時期」と感じていることもあり、うつ状態になったときだけ医療機関を受診するケースも少なくありません。しかし、双極性障害とうつ病では治療方針が大きく異なるため、過去に気分や活動性が異常に高まった時期がなかったかを確認することが非常に重要です。

治療では、症状の時期や程度に応じて気分安定薬や非定型抗精神病薬などを使用します。代表的な薬には、気分安定薬の炭酸リチウム(リーマス)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン/デパケンRなど)、ラモトリギン(ラミクタール)があります。

躁状態ではアリピプラゾール(エビリファイ)やオランザピン(ジプレキサ)などが使用されることがあり、双極性障害のうつ状態ではクエチアピン徐放製剤(ビプレッソ)やルラシドン(ラツーダ)などが治療選択肢となります。

双極性障害では、抗うつ薬を単独で使用すると躁状態への変化(躁転)などを招く可能性があるため、通常のうつ病とは異なる慎重な薬物選択が必要です。また、症状が改善した後も再発を防ぐために長期的な治療が必要になることがあります。

「以前、数日間ほとんど寝なくても平気だった」「一時期だけ異常に活動的だった」など思い当たる時期がある場合には、診察時に医師へ伝えることが大切です。

全般性不安障害(全般不安症/GAD)

全般性不安障害(全般不安症/GAD)は、仕事、健康、家族、お金、将来など日常生活のさまざまなことについて、実際の状況以上に強い不安や心配が長く続き、自分ではなかなかコントロールできなくなる病気です。特定の場面だけで不安になる社交不安障害や、突然強い発作が起こるパニック障害とは異なり、「いつも何かを心配している」状態が続くことが特徴です。

心配が続くことで、落ち着かない、疲れやすい、集中できない、イライラする、筋肉が緊張する、眠れないといった症状が現れます。動悸、息苦しさ、めまい、頭痛、肩こり、胃腸の不調、頻尿など身体症状が前面に出ることもあり、最初は内科などを受診する方も少なくありません。

不安は誰にでもある自然な感情ですが、心配が長期間続き、仕事や家事に集中できない、確認や検索を繰り返してしまう、眠れないなど生活への支障が大きくなっている場合には治療の対象となります。甲状腺疾患などの身体疾患、カフェインやアルコール、服用している薬の影響などを確認することも重要です。

治療では、病気の仕組みを理解する心理教育、生活リズムの調整、認知行動療法などと薬物療法を組み合わせます。薬物療法では、2026年3月にSNRIのベンラファキシン(イフェクサーSR)が日本で全般不安症の適応を取得し、治療選択肢となっています。SSRIやSNRIには不安を和らげる効果が期待できますが、薬剤ごとに国内で承認されている適応が異なるため、症状や併存疾患をみながら選択します。

強い不安がある場合には、ロラゼパム(ワイパックス)やアルプラゾラム(ソラナックス/コンスタン)などのベンゾジアゼピン系抗不安薬、あるいはタンドスピロン(セディール)などを使用することもあります。ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤は長期使用による依存や耐性、眠気、転倒、運転への影響などに注意が必要で、漫然と使用せず期間や量を慎重に判断します。

「心配性な性格だから」と考えて長く我慢している方もいますが、全般不安症は治療によって改善が期待できる病気です。不安や身体症状が続き、仕事や日常生活に影響している場合には早めにご相談ください。

過食症(神経性過食症)

過食症(神経性過食症)は、短時間に大量の食べ物を食べ、その間「食べることを止められない」「自分ではコントロールできない」と感じる過食を繰り返し、その後に体重増加を防ぐための行動を行う摂食障害の一つです。代表的な代償行動には、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿薬の不適切な使用、極端な食事制限、過度な運動などがあります。

体重や体型が自己評価に強く影響し、「食べてしまった」という罪悪感からさらに食事を制限し、その反動で再び過食するという悪循環に陥ることがあります。外見上は標準的な体重であることも多いため、周囲から気づかれにくく、本人が長い間一人で悩んでいることもあります。なお、過食を繰り返しても嘔吐などの代償行動を伴わない場合には、過食性障害(むちゃ食い症)など別の診断を検討します。

過食や嘔吐を繰り返すと、脱水や電解質異常、特に低カリウム血症を起こし、不整脈などにつながることがあります。そのほか、胃食道の炎症、唾液腺の腫れ、歯の酸蝕、月経不順など身体への影響もあるため、必要に応じて血液検査や心電図などの身体評価を行います。強い脱水、吐血、意識障害などがある場合には、精神科だけでなく速やかな身体科での治療が必要です。

治療の中心は、規則的な食事を取り戻し、過食と代償行動の悪循環を減らしていく心理療法です。特に認知行動療法(CBT)や摂食障害に特化したCBT-E、ガイド付きセルフヘルプなどの有効性が知られています。栄養面の支援や生活リズムの調整、必要に応じて家族への支援も組み合わせます。

薬物療法は補助的な位置づけです。日本では現在、摂食障害そのものを適応疾患とする薬剤はありませんが、海外ではSSRIの有効性が報告されており、日本でも併存するうつ症状や不安症状などを評価したうえで、フルボキサミン(ルボックス/デプロメール)などのSSRIを含む薬物療法を検討することがあります。薬だけで過食や嘔吐を治そうとするのではなく、心理療法や食行動への支援と組み合わせることが重要です。

摂食障害は「意志が弱い」「食べ方の問題」というだけではなく、心と身体の両方に影響する病気です。過食や嘔吐を繰り返している、食べることや体重のことで一日の多くを悩んでいる場合には、早めに相談することをおすすめします。身体状態や重症度によっては、摂食障害を専門とする医療機関や内科などと連携して治療します。

更年期障害

更年期障害は、閉経前後の時期に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きく揺らぎながら低下することを背景に、心身にさまざまな症状が現れ、日常生活に支障をきたす状態です。一般に更年期は閉経の前後約5年間ずつ、合計約10年間を指しますが、症状の出方や程度には大きな個人差があります。

代表的な症状には、ほてり、発汗、動悸、頭痛、めまい、肩こり、疲れやすさ、睡眠の乱れなどの身体症状に加え、気分の落ち込み、イライラ、不安、集中力低下、意欲低下などの精神症状があります。仕事や家庭での負担、介護、子どもの独立などライフイベントが重なる時期でもあり、ホルモン変化と心理社会的なストレスが複合して症状を強めることがあります。

更年期と思っていた症状の背景に、うつ病、不安症、甲状腺疾患、貧血など別の病気が隠れていることもあります。そのため、症状の内容や月経の変化、身体状態を確認し、必要に応じて婦人科や内科と連携して評価することが大切です。

治療では、生活習慣の見直しや十分な休養に加え、症状や身体状態に応じてホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、向精神薬などを検討します。HRTでは、エストラジオール製剤(エストラーナテープ、ディビゲル、ル・エストロジェルなど)や結合型エストロゲン(プレマリン)などが用いられます。子宮がある方では、子宮内膜を保護するためにジドロゲステロン(デュファストン)などの黄体ホルモン製剤を併用することがあります。HRTには適さない場合もあるため、婦人科で既往歴や検査結果を確認したうえで選択します。

漢方薬では、症状や体質に応じて加味逍遙散、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散などが使用されることがあります。また、気分の落ち込みや不安が強く、うつ病や不安症を併発している場合には、エスシタロプラム(レクサプロ)やセルトラリン(ジェイゾロフト)などの抗うつ薬を含め、精神科・心療内科での治療を検討することがあります。

「年齢のせいだから仕方がない」と我慢する必要はありません。気分の落ち込みや不安、不眠などが続き、仕事や家庭生活に影響している場合には、婦人科的な評価とあわせて心療内科・精神科へ相談することも選択肢になります。

月経前不快気分障害(PMDD)

月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)は、月経前の黄体期に、強い気分の落ち込み、不安、イライラ、情緒不安定などの精神症状が繰り返し現れ、仕事や家事、学校、人間関係など日常生活に大きな支障をきたす病気です。月経前症候群(PMS)でも心身の症状はみられますが、PMDDでは特に精神症状が強く、本人にとって大きな苦痛となることが特徴です。

代表的な症状には、強い抑うつ気分、涙もろさ、怒りっぽさ、対人関係での摩擦、不安や緊張、興味や意欲の低下、集中力低下、疲れやすさ、過食や食欲の変化、眠気または不眠などがあります。乳房の張り、むくみ、頭痛、腹部膨満感など、身体症状を伴うこともあります。症状は通常、月経開始前に強くなり、月経が始まると数日以内に軽快していくという周期性があります。

診断では、単に「月経前に調子が悪い」という印象だけでなく、症状が月経周期と関連して繰り返されているかを確認することが重要です。そのため、少なくとも2周期程度、毎日の気分や身体症状を症状日誌などに記録していただくことがあります。また、うつ病や全般性不安障害などがもともと存在し、月経前に一時的に悪化している「月経前増悪」とPMDDを区別することも大切です。

治療では、まず睡眠や生活リズムを整えること、適度な運動、アルコールやカフェインの摂りすぎを避けること、症状日誌をつけて自分の周期を把握することなどが基本となります。心理的な負担が強い場合には、認知行動療法などの心理療法を組み合わせることもあります。

中等症から重症のPMDDでは、薬物療法としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効とされ、代表的にはセルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)、パロキセチン(パキシル)などが用いられることがあります。毎日継続して服用する方法のほか、排卵後から月経開始までの黄体期だけ服用する方法もあります。日本ではPMS・PMDDそのものに対するSSRI治療は保険適用外であるため、治療目的や費用について医師と相談しながら選択します。

婦人科では、排卵を抑えてホルモン変動を小さくする目的で、低用量経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が検討されることがあります。特にドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合薬はPMDDの症状改善が期待される薬の一つですが、日本ではPMDDに対しては適応外です。血栓症などのリスクもあるため、婦人科で身体状態や既往歴を確認したうえで使用を判断します。

「月経前になると毎月、別人のように気分が不安定になる」「仕事や家族関係に影響するほどイライラや落ち込みが強い」という場合には、我慢せず相談してください。精神症状が中心であれば心療内科・精神科、月経やホルモン治療も含めた評価が必要な場合には婦人科と連携しながら治療を考えていきます。

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