強迫性障害
強迫性障害とはどんな病気?
強迫性障害は、ある考え(家族の誰かが死ぬのではないか、自分の手が汚れているのではないかなど)が自分の意思に反して何度も頭に浮かび、払いのけることができなくなる強迫観念と、ある行為(手を何度も洗う、ガス栓や鍵を何度も確認するなど)をしないと気がすまなくなる強迫行為があらわれ、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうことで、日常生活に支障をきたす病気です。強迫性障害は初期の段階で適切な治療を受けることが大切です。
強迫性障害は、WHO(世界保健機関)によって「経済損失および生活の質の低下に影響する10大疾患」の1つとされたほど、苦痛や支障の大きなものですが、なかなか治療に踏み出せず苦しんでいる人が多いです。欧米では、全人口のうち強迫性障害にかかっている人は1、2%、50~100人に一人の割合といわれており、日本でも同じくらいの割合になるとも考えられています。
発症には、性格、生育歴、ストレスや感染症など、多様な要因が関係していると考えられていますが、なぜ強迫性障害になるのか、原因ははっきりとはわかっていません。
しかし、なぜ症状が続くのか、なにが影響して症状が悪化するか、などは解明が進んでいる部分もあり、積極的に治療に取り組めば治すことも可能な病気となっています。
強迫性障害は、誰もが生活のなかで普通にすること(戸締まりの確認や手洗いなど)の延長線上にあります。「自分は少し神経質なだけ」なのか「もしかしたらちょっと行き過ぎか」という判断は難しいところですが、放置してしまうと重症化していく傾向があり、うつ状態などを合併してしまうこともあり、治療も大変になります。確認行為に家族も巻き込んでしまうことなども少なくありません。生活の大部分が左右されて行動範囲が狭まり、自宅から一歩も出られなくなってしまうケースもあります。
強迫性障害は、かつては不安障害の一種と考えられていました。しかしながら現在では、「とらわれ」と「くり返し行動」を特徴とした病気で、不安障害とは異質の病気と考えられています。
強迫性障害の主な症状
強迫性障害には、強迫観念と強迫行為の2つの症状があり、その両方があらわれる場合が多いです。代表的な強迫観念と強迫行為として
不潔恐怖と洗浄
- 汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯をくりかえすドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、さわれない。
加害恐怖
- 誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。
確認行為
- 戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認するなど)。
儀式行為
- 自分の決めた手順でものごとを行わないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。
数字へのこだわり
- 不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
物の配置、対称性などへのこだわり
- 物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。
当院での治療方法
薬物療法と、認知行動療法という、考え方やものの見かた(認知のゆがみ)を変えるための方法を用いて治療を行っていきます。
強迫性障害は日常生活に支障がないレベルまで治療する事は可能ですが、実は症状を完全になくしてしまうことは難しいのです。ですので、完璧に症状を無くすということにこだわりすぎないことも治療におけるポイントです。
1薬物療法
抗うつ薬(SSRI)という心のバランスを整える薬を用います。抗うつ薬(SSRI)を飲みはじめると、早い人では2~3週間で、症状が軽減するなどの反応が出てきます。しかし、多くは反応が出るまでに、もう少し時間がかかります。どのくらいの量を飲めば効果がでるのかは人によって違いますので、患者さんの様子をみながら少しずつ薬の量を調整していきます。うつ病よりも高用量で、長期間の服薬が必要です。最初は少量から始め、薬との相性を見ながら服薬量を増やしていきます。
SSRIはほかの抗うつ薬に比べると、副作用は軽いものとなっています。
詳細は「薬物療法」をご覧ください。
2心理士によるカウンセリング
認知行動療法は、強迫性障害の原因となっている考え方の癖を少しずつ修正し、日常生活に支障をきたさないように訓練をしていく方法です。
お薬のみで改善が不十分な場合に行うと有効な場合があります。
詳細は「認知行動療法」をご覧ください。
<!–3磁気刺激療法(TMS)
上記の治療法を長期継続していても、なかなか効果が見られない方にお勧めの最新治療法です。
詳しくはこちらをご覧ください。
–>ご来院いただいた後の注意点
- 強迫性障害の症状は、治療を開始してから放物線を描くように、ある段階まで来ると一気に症状が改善します。ですので、治療の初期の段階であきらめないことが非常に大切です。また、飲んでいただく薬の量は患者様の状態を見極めた上で調整していますので、飲む量・回数はお守り下さい。
- SSRIを服用中、アルコールを飲むと副作用が出やすくなるともいわれています。治療の間、お酒はお控えください。
- 強迫性障害の治療では、薬の服用量の多さに不安を感じがちです。認知行動療法がつらくてイヤだと感じることもあるでしょう。しかし、医師から十分な説明を聞き、病気や治療のことが理解できれば、必要な治療なのだと納得できます。
自分が不安に思うこと、治療法の希望などがあれば、主治医にご相談ください。
強迫性障害チェックリスト
深く考えず「はい」か「いいえ」でお答えください。
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不潔だと思うので、公衆電話は使わないようにしているはい ・ いいえ
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いやな考えにとりつかれて、それからなかなか離れられないはい ・ いいえ
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私は、人一倍正直であろうと心がけているはい ・ いいえ
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何事も時間通りにできなければだめだと思うが、よく遅れてしまうはい ・ いいえ
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動物に触れるのがあまり汚いとは思わないはい ・ いいえ
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ガスの元栓や、水道の蛇口、ドアの鍵などを閉めたかどうか何度も確認しないと気が済まないはい ・ いいえ
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私は、非常に融通のきかない人だはい ・ いいえ
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毎日のように嫌な考えが意志に反してわき上がってきて困っているはい ・ いいえ
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偶然、誰かとぶつかるかどうかと過剰な心配をすることはないはい ・ いいえ
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日常の何でもないことをしていても、これでいいのかとひどく疑問に思ってしまうはい ・ いいえ
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私は子供の頃に、両親はどちらも特に厳しくはなかったはい ・ いいえ
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何度も繰り返してやり直さないと気が済まないので、仕事が遅れることがあるはい ・ いいえ
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石鹸は普通の量しか使わないはい ・ いいえ
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私には不吉な数字があるはい ・ いいえ
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手紙を出す前に、何度も相手の住所や名前を確認することはないはい ・ いいえ
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朝の身支度にそれほど時間はかからないはい ・ いいえ
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私はそれほど潔癖症ではないはい ・ いいえ
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細かいことまで、あれこれ考えすぎて困っているはい ・ いいえ
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手入れのいきとどいたトイレなら何のためらいもなく使うことができるはい ・ いいえ
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いま困っていることは何度も確かめないと気が済まないことであるはい ・ いいえ
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バイ菌や病気などのことは特に気にならないはい ・ いいえ
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私は何度も確かめる方ではないはい ・ いいえ
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日常生活をどのように行うかを厳密に決めていないはい ・ いいえ
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お金に触れると手が汚くなるとは思わないはい ・ いいえ
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普通の時に、数を確認しながらすることはないはい ・ いいえ
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朝の洗顔に時間がかかるはい ・ いいえ
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多量に消毒剤を使うことはないはい ・ いいえ
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何度も確かめるので、毎日ひどく時間がかかってしまうはい ・ いいえ
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帰宅後、服をかたづけるのにあまり時間はかからないはい ・ いいえ
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いくら慎重に行ったところで、うまくいかないと思うことがあるはい ・ いいえ
たわらクリニックの紹介
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