「TMS治療」と聞いて、何だか怪しく感じた方もいるかもしれません。しかしご安心ください。TMS治療は、きちんと国の認可が下りている治療法になります。
本記事を読むことで次のことがわかります。
● TMS治療とは何か
● TMS治療が普及した背景
● TMS治療のメカニズムと効果が期待できる病気
● TMS治療の安全性について
● TMS治療を行うクリニック選びのポイント
TMS治療が、どのような治療なのか気になっている方はぜひ参考にしてください。
Contents
TMS治療とは?
TMS治療は、厳密にいうと「repetitive Transcranial Magnetic Stimulation=反復経頭蓋磁気刺激法」を略した「rTMS」といいます。
脳に磁気での刺激を加えて、脳の特定部位を活性化させることで低下した機能を回復することを目的にした治療です。1回3〜20分程、リラックスした状態で治療を受けられます。治療開始前に麻酔などの処置や頭を傷つける必要がないため、身体への負担も少ないのが特徴です。TMS治療は、最低でも週に2〜3回程度を3〜6週間、継続的に行います。1回だけで効果が出ることはほとんどなく、およそ10回程度から治療効果を感じる方が多いです。
TMS治療が普及した経緯
1985年、イギリスのBaker氏を中心とした研究チームが頭部に磁気刺激を行い、手の指の筋肉を収縮させることに成功しました。これをきっかけに研究が重ねられ、1993年に初めてうつ病の治療に用いられたのです。その後2008年にアメリカや欧州で治療として認められました。そして国内では、2017年9月に一部のTMS治療機器を用いることが厚生労働省から認められました。ただ、日本でTMS治療を行っているクリニックはまだ多くはないのが現状です。
TMS治療はうつ病に有効
日本でTMS治療が正式に認められているのは「うつ病」に対する治療のみです。うつ病は、気分がひどく落ち込み、やる気がでない、憂うつ、眠れない、疲れやすいといった症状があらわれる病気です。そんなうつ病に対して、TMS治療は有効性が確立されています。
他にも次のような病気に有効な可能性があると言われています。
● 強迫性傷害
● 双極性障害
● PTSD(心的外傷後ストレス障害)
● 慢性疼痛症候群
● 全般性不安障害
● パーキンソン病
アメリカでは、強迫性障害にもTMS治療が認められています。上記の疾患は、まだ可能性の範囲を超えておらず研究が進んでいる段階です。もし「双極性障害にも効果があるよ」などと断言するようなクリニックがあった場合は注意が必要です。
TMS治療の仕組み
TMS治療はうつ病に有効です。これまでうつ病は心の病気だと考えられてきましたが、近年の研究によって「脳」に問題がある病気だとわかってきています。具体的には、脳の前に位置する「前頭前野」と呼ばれる部分にある背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)の機能低下がかかわっているとされています。
そこで、TMS治療が行うのは、機能が低下した背外側前頭前野に磁気の刺激を加えて、脳の回復を図ります。背外側前頭前野がもつ以下のような低下していた機能を回復させることで、うつ病の症状を緩和あるいは改善を目指すわけです。
「背外側前頭前野のはたらき」
● 意欲
● 記憶
● 注意
● 意思決定
● 感情をつかさどる偏桃体のバランスを整える
TMS治療の副作用や安全性
TMS治療では、まれに副作用を起こす場合があります。その中でも一番よく起こる副作用は刺激による頭皮の痛みや顔の不快な感覚です。次に起こりやすいのは頭痛や首の痛み、肩こりが起こりやすくなっています。非常にまれではありますが、一時的にけいれん発作を起こすことがあります。
上記のようなリスクや安全性を考えて、TMS治療が禁止となっている条件、推奨しない病気や条件があるためあらかじめ把握しておきましょう。
【禁止】
● 治療箇所の近くに金属がある場合
● ペースメーカーがある患者
【推奨しない】
● 治療箇所に近くはないが金属がある場合
● てんかんや痙攣発作を起こしたことがある人
● 痙攣を起こしやすくする薬剤や成分を摂取している人
● 覚せい剤の乱用や離脱時
● 妊婦
● 重篤な身体疾患がある
該当する事項がある場合はTMS治療前、医師の診察を受けるときに必ず申告しましょう。
また、18歳未満の発達障害や精神疾患のある子どもに対するTMS治療ですが、今のところ有効性や安全性はきちんとした証明に至っていません。一般社団法人 日本児童青年精神医学会も「不十分」だと述べています。そのため、現状は子どもへのTMS治療は控えておいた方がよいでしょう。
TMS治療を受けるクリニック選びのポイント
「いざTMS治療を受けよう」となったときに悩みがちなのが、クリニック選びです。そこで次の3つのポイントを参考に選んでください。
● 専門性が高く実績が豊富か
● アクセスしやすいか
● 予約が取りやすいか
では一つずつ見ていきましょう。
専門性が高く実績が豊富か
日本のTMS治療は、2019年6月に保険診療化されたばかりです。そのため、TMS治療の専門性をもつ医師はまだ日本に少ないのが現状になります。世界では日本よりも先にTMS治療が行われ始めたため、海外などでTMS治療を専門的に学んだ医師がいるクリニックが最も望ましいです。
合わせて、TMS治療の症例数の多さや、うつ病の治療経験を積んだ医師が行っているかどうかも大切なポイントです。経験が少ない医師よりも、実績のある医師の方が安心して任せられます。また、繰り返しになりますが現状、TMS治療はうつ病に対する治療として用いられています。TMS治療による効果が出たかどうか、うつ病に精通していなければ正確に評価することができません。精神科医など、精神疾患として分類される病気の治療経験がある医師がいるクリニックを選ぶとよいでしょう。
アクセスしやすいか
TMS治療は、最低でも週2~3回程度、3~6週間にわたって治療を続ける必要があります。片道1時間かかるなど、アクセスが悪いと治療の継続が難しいため、こまめに通院できるかどうかも一つの基準として選んでください。ちなみにTMS治療後、車の運転は可能です。
予約が取りやすいか
高頻度の治療が必要なため、予約の取りやすさも大切です。「せっかくTMS治療に充てられる時間を確保したのに、なかなか予約が取れない」となっては意味がありません。オンラインでいつでも予約ができ、予約変更やキャンセルも行いやすいクリニックがよいです。
たわらクリニックのTMS治療について
たわらクリニック東京院・蒲田院では、TMS治療を行っています。
医師による診断に基づき、メリット・デメリットを十分にご説明し、ご納得いただいた上で導入させていただきます。TMS治療をすべきか迷われていらっしゃる方もお気軽にご相談ください。
まとめ
TMS治療とは、脳に磁気刺激を加えて、脳の特定部位を活性化させることで低下した機能を回復することを目的にした治療です。日本でもうつ病の治療として普及し始めています。TMS治療をする際は、本記事でご紹介した3つのポイントを参考にクリニックを選んでみてください。