ADHD(注意欠陥・多動性障害)|子ども・大人別の症状、診断、治療法について

近年、耳にする機会が多い「ADHD」という用語。

「何となく知ってるけど、具体的なことは分からない」
という人も多いのではないでしょうか。

本記事では、ADHDがどのような状態なのか、原因や症状、診断基準、治療法について解説していきます。

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ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、発達障害に分類される症状です。年齢に見合わない不注意(すぐに別のことに注意がそれる)や多動性(落ちつきがない)、衝動性(思いついたことを即座に行動してしまう)といった特徴があります。このような特徴から、日常生活でさまざまなミスが起こりやすく、自己肯定感が下がる人も珍しくありません。

ADHDは、発達障害のため先天的な症状ですが、大人になってからADHDだと診断される人もいます。発症する割合としては、男の子に多いと言われており、大人になってから診断される人の割合は、男女比1:1に近いとされています。

ADHDの原因

結論から述べると、ADHDの原因は明確になっていません。脳機能や遺伝、環境の問題が複雑に絡み合って発症していると考えられています。

脳機能

「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」という物質の不足が、原因の1つである可能性が考えられています。

脳の前頭葉と呼ばれる部位の機能は、物事の整理や判断、注意を集中させる、行動のコントロールです。つまり「不注意」「多動性」「衝動性」という特徴をもつADHDは、前頭葉の機能がうまく働いていないために、生じているのではないかと考えられています。

そんな前頭葉を正常に働かせるのに必要なのが「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」です。脳の神経細胞同士は、ドーパミンやノルアドレナリンをはじめとした「神経伝達物質」で情報や刺激を伝えています。しかし、物質の分泌が何らかの原因で少なくなり、正常に情報や刺激が伝わっていないのではと考えられているのです。

遺伝

ADHDは遺伝による影響もあると考えられています。しかし「必ず遺伝する」というわけではありません。証拠として、遺伝子が一致する一卵性双生児で、片方がADHDでも、もう片方はADHDではないケースがあります。ただし、家族全員がADHDというケースがあるのも事実です。そのため、遺伝が関わっている可能性は0ではないという見解を示している専門家が多くなっています。

環境

次のような環境因子もADHDの発症に影響していると考えられています。

● 親の喫煙による受動喫煙
● 空気汚染
● 化学物質
● 出生時の感染症
● 低出生体重児
● 経済状況

何か1つの要素ではなく、さまざまな因子が絡み合って、ADHDの発症に関係していると言われています。

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ADHDの診断基準

ADHDは、アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5「精神疾患・精神障害の診断・統計マニュアル第5版」を基に診断されます。厚生労働省が分かりやすくまとめているのでご紹介します。

  1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
  2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること
  3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

引用元:厚生労働省e-ヘルスネット「ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療」

上記などの基準をすべて満たしたとき、ADHDと診断されます。ただ実際は、この診断基準のみならず、医師による診察による結果も考慮されたうえで判断が下されます。

また、近年は大人のADHDも増加しており、子どもだけでなくどの年齢であっても発症し得る病気だと認識が変わりました。子どもに限らず大人も「ADHDかも?」と思ったら、病院を受診して、きちんと医師に診てもらうことが大切です。

ADHDの症状

ADHDの症状は、年齢に見合わない「不注意」「多動性」「衝動性」が特徴です。中でも、男の子(男性)は多動性・衝動性が目立ち、女の子(女性)は不注意が目立つ場合が多くなっています。

では、大人と子どもに分けて具体的な症状を見ていきましょう。

子どもの症状

不注意と多動性・衝動性の症状に分けると次のとおりです。

【不注意】
● 迷子になりやすい
● 注意が散漫になりやすい
● 指示されたことと関係ない行動をしてしまう
● 忘れ物や失くし物が多い
● ケアレスミスが目立つ
● 約束を忘れて守れない
● 複数のタスクを同時にこなせず、物事を順序立てて進められない

【多動性・衝動性】
● 興味を引かれるものを見つけると急に走り出す
● 高い場所に登りたがる
● 友達とけんかやトラブルが多い
● 授業中などでじっとしていられずに席を立つ
● 物を乱暴に扱い、壊してしまうことが多い
● 授業中に手を挙げずに答えてしまう

大人の症状

大人のADHDでは、子どものADHDで見られる症状のほかに、このような症状も見られます。

【不注意】
● 忘れ物や失くし物が頻繁にある
● 不注意によるミスが多い
● 約束を忘れて守れないことがある
● 複数のタスクを同時に進められず、物事を計画的に行えない

【多動性・衝動性】
● 貧乏ゆすりなど、落ち着きがない行動
● 言ってはいけないことをつい口にしてしまう
● 衝動的に決断や行動をしてしまう

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ADHDの治療方法

本人の意識だけでADHDの予防や症状の緩和を図ることは困難です。
次のような治療を行います。

● 薬による治療
● 環境づくり
● カウンセリング

それぞれ詳しく見ていきましょう。

薬による治療

主にメチルフェニデートや、アトモキセチン、グアンファシンの3つが用いられています。1つの原因だと考えられている「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質の不足を改善するのが目的です。

● メチルフェニデート:ドーパミンとノルアドレナリンの働きを強める(ドーパミン優位)
● アトモキセチン:ドーパミンとノルアドレナリンの働きを強める(ノルアドレナリン優位)
● グアンファシン:多くの神経伝達物質を取り込めるようにする

また、ADHDの合併して生じた、強い不安や抑うつなどの症状に対して、抗不安薬や抗うつ薬を処方する場合もあります。医師に症状をきちんと伝え、話し合ったうえで適切な治療薬を処方してもらうことが大切です。

カウンセリング

こころの不調は、薬による治療では改善が難しい場合があります。そこで、こころに渦巻く不安をカウンセリングで言葉にしてもらい、自身がよいと思える行動を実行できるように支援するのが目的です。

医学的な用語では、認知行動療法と呼ばれます。数回で効果が出るものではないため、根気強く時間をかけて治療していかなければなりません。また、治療を終了しても再発するリスクがあるため、再発予防だけでなく、再発した際もすぐに対応できるよう準備しておく必要があります。

環境づくり

薬物療法とカウンセリングと並行して、環境づくりも大切です。ADHDの行動特性に合わせて、ADHDと診断された方が暮らしやすい環境を整えます。

● 余計な刺激を減らないようシンプルな環境にする
● 集中できる時間に合わせてリセットする
● 終わりを明確にする
● これからの予定を表にする
● 物を置く場所を決める

上記は一般的な対策ですが、人によって合う合わないがあります。症状や個性に応じて、試行錯誤しながら合った環境づくりを行うことが大切です。

ADHDの方に対する接し方

ここからは、ADHDの方に対する接し方について確認していきます。子どもでも大人でも、それぞれの特性に合わせて接することが大切です。本項では、基本的な接し方を2つご紹介します。

子どもの場合は特によく褒める

ADHDの子どもは、褒めて伸ばすように意識しましょう。「ありのままの自分を肯定する感覚」である自己肯定感は、子ども時代が大切です。ADHDの影響で、ミスしやすく自己肯定感が下がりやすい状況にもかかわらず、その度に叱られれば増々、自己肯定感が下がってしまいます。

日常生活におけるトラブルはある程度、環境づくりや工夫で取り除くことができます。日常生活のトラブルを少しでも減らし、できたことはよく褒めるようにしましょう。

威圧的な態度で接さない

ADHDの行動特性によって、日常生活でミスが増えてしまう人は珍しくありません。しかし何か起こった際、すぐに怒ったり、威圧的な態度で指摘したりすると、症状の悪化やうつ病、適応障害につながるおそれがあります。指摘する際は必ず理由を添えて、わかりやすい言葉で伝えることが大切です。

まとめ

ADHDは不注意、多動性、衝動性の3つの特徴がある発達障害です。脳機能や遺伝、環境が複雑に絡み合い、発症すると考えられていますが、現時点で原因は判明していません。

「もしかしたらADHDかも?」と、自身や周囲の人に心当たりがある場合は、早めに受診することが大切です。また、周囲にADHDと診断された方がいれば、本記事でご紹介した内容を参考に、環境づくりや接し方などできることに取り組んで、良好な関係性を築きましょう。

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