症状解説

統合失調症

統合失調症とはどんな病気?

統合失調症は幻聴や妄想(見張られている・後を付けられているといった妄想)など多彩な症状が現れる病気です。
20代前後の比較的若い時期に発病することが多く、高齢になってから発症するケースは比較的少なくなっています。症状は急に現れることもあれば、時間をかけてゆっくりとあらわれることもあります。

統合失調症の原因

統合失調症に原因は明らかではありませんが、いくつかの要因があるのではないかと考えられています。

1. 脳のドーパミン仮説

統合失調症は脳をはじめとする神経系の機能に障害が起こる病気ではないかと言われています。精神に関する各部位が機能しないことで、精神状態が正常に保たれなくなります。細胞間の情報伝達の役割を果たす神経伝達物質にはさまざまな種類があり、特にドーパミンやセロトニンなどが統合失調症の発症に関係があると考えられています。 ドーパミンとは感情や性格などに関係する神経伝達物質です。このドーパミンは、過度なストレスや不安を感じたときに働きすぎてしまいます。その結果、脳内の情報伝達が阻害されてしまい、統合失調症を発症するのではないかと言われています。これは、ドーパミンの働きを活性化させる薬物が統合失調症に似た症状(幻覚・妄想など)を引き起こすことから、ドーパミンの過剰が関係していると予想されました。

2. ストレス・脆弱性仮説

ストレス・脆弱性仮説は、様々な要因が積み重なり発症するのではないと考えられている仮説です。遺伝的、脳のトラブル、性格や気質などといった元々の要因がある「脆弱性」に、環境やライフイベント、病気といった日常で感じるストレスが重なり発症するのではないかと考えられています。

この他にも、遺伝的な要素がある、母親が妊娠・出産時に低酸素症を伴う合併症などの説が唱えられていますが、はっきりとした要因は解明されていません。

3つの病気の型

統合失調症には大きく分けて以下の3つのタイプがあります。

妄想型
妄想型は30歳前後で発病することが多く、一般的には3つの中ではもっとも症状が軽いタイプです。主な症状として妄想や幻覚が起こり、それ以外の症状はあまり見られません。そのため、周囲の人からは病気と思われないケースも多いようです。
破瓜型(はか型)
統合失調症の中で最も多いタイプがこの破瓜型です。思春期~青年期or10代~20代に徐々に発病することが多く、またその症状も慢性的に続く(急な症状の変化はあまりないが、症状が長く続く)ケースが多くあります。
症状としては、支離滅裂な会話や行動、感情の平板化などがみられます。
緊張型
緊張型も20歳前後に発病することが多く、激しい興奮状態と昏迷状態(周囲に対する反応が極端に鈍くなる状態)という正反対の症状が現れます。具体的には、じっと動かなくなる、奇妙な姿勢を取るなどといった症状がみられます。一定期間を過ぎると症状は良くなりますが、症状が良くなったからといって治療を止めると再発します。

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発症から5段階の流れ

発症から症状が落ち着くまでの経過は、下記の5段階をたどることとなります。

1.前兆期
急性期の前段階で、様々な特徴的な症状が出てくる時期です。
焦りや不安感、感覚過敏、集中することが困難になる、やる気がなくなるなどの症状があります。
これらの症状はうつ病や気分障害の症状と似ているため、すぐに統合失調症と診断することができないことがあります。また、不眠・食欲がなくなる、頭痛といった自律神経の症状がみられることも特徴です。この段階で医療機関にかかる必要があります。
2.前兆急性期
幻覚や妄想など、統合失調症に特徴的な症状が出てくる時期です。
不安や緊張感、感覚過敏が極度に強まることも特徴です。
この幻覚や妄想によって頭の中が混乱してしまい、行動にまとまりを欠いたり、周囲とのコミュニケーションがうまくとれなくなったりなど、日常生活に支障をきたすようになります。
3.休息期
感情鈍麻や意欲の低下がみられる時期です。
急性期の統合失調症に特徴的な症状が出てきた後、休息期には無気力になり何もしなくなるなどの陰性症状が中心となります。この時期は不安定な精神状態になり、少しのきっかけで急性期に逆戻りしてしまうこともありますが、焦らないことが重要です。
4.回復期
治療により症状が徐々におさまり、安定を取り戻していく時期です。
周囲からは病気がよくなったように見えますが、患者さんは疲労感や意欲の低下を感じながら、今後の不安や焦りを覚えることがあります。
5.安定期
回復期を経て安定を取り戻す時期です。
安定期には、病前の状態に戻る場合もありますが、急性期の症状が一部残ってしまう場合や、回復期のような元気のない状態が続いてしまう場合などもあります。
しかし、この状態から再び前兆期が始まってしまうこともあるため、注意が必要な時期でもあります。

統合失調症は、症状が強く出る陽性症状の時には日常生活が制限されやすくなります。
まずはお薬の助けなどを併用して、日常生活を安定させることが先決になりますが、いったん症状の安定傾向に至ったら必要なお薬に絞って薬物治療を継続することで、再発率が下がります。
その結果、総じて薬物の投与量や日常や社会生活の制限期間が短くなります。まずはお気軽にご相談ください。

統合失調症の症状

統合失調症では主に以下3つのような症状があらわれます。
気になる、当てはまると思うものがある場合は、一度心療内科を受診されることをおすすめします。

陽性症状

  • 独り言・独り笑いが多い
  • 監視されている・盗聴されていると感じる
  • 他人から危害を加えられていると感じる
  • 自分の考えや行動が他人の声まで聞こえてくる
  • 悪口を言われていると感じる
  • 自分が責められている、尾行されている、騙されていると感じる
  • 本や新聞などが自分のことを指していると信じている
  • 他人が自分の心を読めると感じる
  • 実際にないものを感じる。幻聴が最も多く見られる
  • 話題がとりとめもなくあちこちに飛ぶ。
  • 子供じみた行動
  • 身なりや衛生面が不適切になる
  • 極度に興奮する

陰性症状
(消耗期・回復期にみられる慢性の症状)

  • 自宅にひきこもりがちとなる
  • 表情が乏しくなり、アイコンタクトなども少なくなる
  • 口数が少なくなる、質問に対してそっけない答えを返す
  • 以前は楽しめていたことに関心を示さなくなる
  • 人間関係に関心を示さなくなる
  • 感情の変化が乏しくなる
  • 周りのことに興味関心がなくなる
  • 部屋が荒れがちになる

認知障害

認知障害とは、集中力や記憶力の低下、計画能力や問題解決能力、整理能力の欠如といった問題が生じる症状です。

  • 本を最後まで読めない
  • 指示通りに物事が出来ない
  • 話の筋を追えない
  • 単純作業でもやり終わらない
  • 気持ちや考えが集中できない
  • 1つのことに集中できない

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当院での治療方法

統合失調症の治療は薬物療法と心理社会的な治療(リハビリテーションや精神療法)を組み合わせて行っていきます。

1薬物療法

統合失調症の治療では、まず、症状を抑えるための薬を飲んでいただくことが必要となります。ただ、当院では薬は過不足なく出すことが大切だと考えています。最初は症状を抑えるために薬をしっかりと服用していただき、症状が治まってきた段階で薬を減らしていく。それがトータルの薬の量をもっとも少なくする方法です。

抗精神病薬の作用

統合失調症に用いられる薬剤は「抗精神病薬」と呼ばれます。抗精神病薬の作用は大きく分けて、3種類あります。

  • 抗精神病作用…幻覚や妄想などの陽性症状を改善する
  • 鎮静催眠作用…不安感や不眠などの症状を改善する
  • 精神賦活作用…感情や意欲の低下などの陰性症状を改善する

抗精神病薬には様々な種類があり、薬剤によって上記の3種類の作用のいずれかが強い、という特徴があります。そのため、患者さんそれぞれの症状に合う薬を適切に処方するにはある程度の試行錯誤が必要となり、治療は長期間におよびます。
また、幻覚や妄想といった症状を薬で改善されることが本当なのか、と不安に感じる方もいるかと思いますが、実際に抗精神病薬を服用した患者さんは「自分に余裕が生まれた」「1つのことに過敏になることがなくなった」などの声がありました。このように、薬を服用した感覚として、気持ちが楽になり、リラックスした状況になれることが多くあります。

抗精神病薬の再発予防効果

抗精神病薬には再発予防効果があります。統合失調症は再発しやすい特徴があり、薬物治療で一旦症状が改善しても、その後も服薬を継続しないと数年で60~80%の患者さんが再発してしまいます。しかし、統合失調症の症状が改善した後も薬物治療を継続することによってその再発率が減少することがわかっています。
そのため、調子が良くなり自己判断で服薬を中止しても、また何ヶ月後に日々積み重なるストレスによって再発するケースが多いです。服薬は長期間にわたることを理解し、自己判断で服薬を中止せずに主治医と相談することが大切です。

抗精神病薬の副作用

抗精神病薬は、比較的副作用が少ない薬です。副作用の種類は、どの薬物でも共通するものや抗精神病薬の特徴的なものなどがあります。

  • 薬物に共通する副作用
    めまい、眠気、口が渇く、高血糖、体重増加、だるさ、便秘、性機能低下
  • 抗精神病薬に特徴的な副作用
    • アカシジア:そわそわしてじっと座っていられない、足がむずむずする
    • ジストニア:筋肉の一部がひきつる、ろれつが回らない
    • パーキンソン症状:体がこわばって動きが悪い、震える、よだれが出る
    • ジスキネジア:口などが勝手に動いてしまう
    ※これらの副作用を軽減する薬と併用したり、減量することで症状の改善をします。しかし、個人によって投与量や投与期間が異なるため、副作用の発現に影響します。
  • 極稀な副作用
    悪性症候群…神経遮断薬による悪性症候群。発熱、筋肉の硬直、自律神経症状などがみられる。この場合は、速やかな治療が必要です。

抗精神病薬の種類

・定型抗精神病薬…第1世代の従来型抗精神病薬と呼ばれ、以前から用いられていた薬物。この薬物は、脳のドーパミンの働きを強力に抑制する力があるため、陽性症状を最善することが出来ます。しかし、全体としては精神面への副作用が少なめとなります。 ・非定型抗精神病薬…第2世代の抗精神病薬と呼ばれ、現代の主流となる薬物。従来の薬物より副作用は少なくなります。また、ドーパミンだけでなくセロトニン、その他の神経伝達物質を抑制する力があるため、期待される薬物です。
このように、抗精神病薬には様々な種類があります。それぞれの患者さんの症状によって、患者さんに合った種類や投与量を決めていくので試行錯誤が必要です。主治医と一緒に共同作業をしながら、自分にあった薬を見つけていきましょう。

2心理社会的な治療(リハビリテーションや精神療法)

統合失調症の場合は、「支持療法」と呼ばれる方法で行います。支持療法には、患者さんを精神的にバックアップする、といった意味合いがあります。患者さんが毎日の生活の中で、不安に感じたり心配していることを具体的に話し合い、解決の糸口を一緒に見つけていく作業です。この療法は、会話を介して行うところが、生活技能訓練等といった他のリハビリテーションと異なるところです。支持療法の目的は、患者さんの不安解消や精神の安定にあります。
また、必要に応じて、生活機能訓練(SST)等のリハビリテーションを行っている機関を紹介することも可能です。主治医とご相談ください。

自身の治療との向き合い方

早期治療ほど、治療結果が良くなります。また、統合失調症の予後については患者さんがいかに服薬をしっかり続けるかにかかっています。調子が良くなって中止しても、少しのストレスなどで再発症する可能性が高いので、しっかり服薬する期間を守りましょう。

ご家族や周囲の接し方

まずは、家族が病気を受け入れることが大切です。精神疾患は偏見が付き纏います。世間体だけでなく、家族にも関係します。この病気から背を向けず向き合わない限り、病気の改善への第一歩を進むことが出来ず、解決策が生まれません。
そのため、病気と向き合うためにはどうしたらいいか考え、回復のためにも家族のサポートは重要となります。

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ご来院いただいた際の注意点

症状が良くなったと思い、患者様の判断で薬を飲むことを止めてしまったために、ふたたび症状が重くなってしまうことが良くあります。飲んでいただく薬の量は患者様の状態を見極めた上で調整していますので、飲む量・回数はお守り下さい。
社会活動に復帰するための基本は規則正しい生活です。特に、決まった時間の食事・睡眠を心がけてください。

統合失調症チェックシート

ここ1ヵ月で、次のような症状がみられる場合、チェックしてください。

  1. 自分を責めたり命令してくる、正体不明の声が聞こえる
    はい ・ いいえ
  2. 極度の不安や緊張を感じるようになった
    はい ・ いいえ
  3. 自分は誰かに操られていると感じる
    はい ・ いいえ
  4. みんなが自分の悪口を言ったり、嫌がらせをすると感じる
    はい ・ いいえ
  5. 「楽しい」「嬉しい」「心地よい」などと感じなくなった
    はい ・ いいえ
  6. 頭の中が騒がしくて眠れなくなった、または眠りすぎるほど眠るようになった
    はい ・ いいえ
  7. 人と話すのが苦痛になり、誰とも話さなくなった
    はい ・ いいえ
  8. 独り笑い、独り言を言うようになった
    はい ・ いいえ
  9. 直前のことを思い出せなくなったり、頭が混乱して考えがまとまらなくなった
    はい ・ いいえ
  10. 部屋に引きこもり、1日中ぼんやり過ごすようになった
    はい ・ いいえ
  11. 自分の考えていることが周りにもれていると感じる
    はい ・ いいえ
  12. ささいなことに過敏になり、注意をそがれたり、興奮するようになった
    はい ・ いいえ
  13. 誰かから監視されたり、盗聴されたり、ねらわれていると感じる
    はい ・ いいえ
  14. 1つのことに集中したり、とっさの判断ができなくなった
    はい ・ いいえ
  15. 何をするのも億劫で、意欲や気力がなくなった
    はい ・ いいえ

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